レストラン経営者、コロナ経済対策による賃金上昇を懸念
By David Sherfinski – The Washington Times – Sunday, February 14, 2021
バイデン大統領の1兆9000億㌦の新型コロナウイルス経済対策が実施された場合、単に最低賃金が引き上げられるだけではない。外食産業が新型コロナに伴う制限や閉鎖からの回復目指して苦闘する中、レストランなどでチップを得ている労働者が収入を得る方法が大きく変わることになる。
レストラン経営者は、引き上げによって、もともと小さな利幅がさらに小さくなり、依然回復が見えない経済をさらに悪化させると懸念している。
下院民主党は年内に、チップを受け取る労働者の最低賃金を2倍以上の時給4.95㌦にするにことを計画している。最終的には、2027年までに時給15㌦と同等にすることを目指している。
フロリダ州ウェストパームビーチのドン・ローマン・レストランのオーナー、ディナ・ルビオさんは、法案が成立すれば、スタッフを休職させたり、値段を上げたりせざるを得なくなるかもしれないと述べた。
「何とか現状を切り抜けようとしているが、障害が一つ増えることになる」
全米レストラン協会は、レストラン、バーへの何十億㌦もの支援などによるプラスの影響よりも、法案の影響によるマイナスの方が大きいと指摘した。
同協会の渉外担当副会長ショーン・ケネディ氏は、「最低賃金の引き上げと(チップを賃金に含める)チップクレジットの廃止で、レストランが事業を拡大したり、客を増やしたりできるという経済学者にはまだ会ったことがない」と述べた。
ケネディ氏によると、感染拡大によって11万軒のレストランが閉店し、250万の雇用が失われた。
従業員のチップを合わせた賃金が、最低賃金に届かない場合、雇用主らは差額分を補填しなければならない。これは「チップクレジット」と呼ばれている。しかし、この法律が何を目指しているのかはよく分かっていない。
民主党の計画では、チップクレジットは2027年までに廃止される。
ケネディ氏は、接客係の収入は通常、チップを含めて1時間に19~25㌦になり、短期間で同等にしようとすると、接客係の賃金が減少する可能性があると指摘した。
ケネディ氏はまた、レストラン産業は、賃金についてさまざまな協議を行う用意があるが、今は大変革を実施する時ではないと述べた。
「5年で(時給)15㌦まで増額は速すぎる、チップクレジットの廃止も速すぎる。これではレストラン業界はもたない」
チップを含めた最低賃金の廃止を求めるグループは、「最低限度未満の賃金」があることで、コロナ禍で人種間格差が悪化したと主張している。
「貧しい人々の運動」の共同議長リズ・セオハリス氏は「チップを得る仕事は、奴隷制の名残だ。人々が、労働者が、チップを得る労働者が傷つけられてきた。あまりに長い間続いてきた。もう黙っていることはできない」と述べた。
権利擁護団体「ワン・フェア・ウェイジ(一つの公平な賃金)」の今月の報告によると、黒人労働者が受け取るチップは、全体の労働者よりも少ないとみられ、職場でソーシャルディスタンシングやマスク着用のルールを実行しようとして罰の受ける可能性も高い。
アラスカ、カリフォルニア、ミネソタ、モンタナ、ネバダ、オレゴン、ワシントン州では、チップを受け取る労働者の最低賃金が、一部の例外を除いて、通常の最低賃金と同水準にまで引き上げられた。これによって、多くのチップ労働者の収入の下限が引き上げられるのは間違いない。
左派系の経済政策研究所の2017年の研究によると、チップを受け取る労働者の最低賃金がまだ時給2.13㌦の州のウェイターやバーテンダーの賃金は、他の州よりもほぼ17%少ない。
民主党は、賃金を平等にすることの重要な点はそこではないと主張する。
民主党のアンディ・レビン下院議員(ミシガン州)は「最低限度額未満の賃金をなくすべき時だ。それだけだ」と述べた。
議会予算局(CBO)が今月公表した報告によると、チップを受け取る労働者の最低賃金を廃止し、全体の最低賃金を2025年までに時給7.25㌦から15㌦に引き上げるという下院民主党の計画が実施されれば、140万の雇用が失われる一方で、約90万人が貧困から脱する。
民主党の賃金引き上げの夢はすぐにはかなわない可能性がある。
民主党のキルステン・シネマ上院議員(アリゾナ州)は、経済対策にこの賃金法案を盛り込むことに反対の意向を表明しており、これでは50対50の上院を通過させることは難しい。
サキ大統領報道官は、バイデン氏は賃金引き上げを「あきらめていない」としたうえで、議会での審議には時間が掛かると述べた。
最低賃金の問題が、バイデン氏が行政管理予算局(OMB)長官に指名したニーラ・タンデン氏の指名公聴会で取り上げられると、共和党のリンゼー・グラム上院議員(サウスカロライナ州)はタンデン氏に、レストランを経営したことはあるかと詰め寄った。
タンデン氏は、レストン経営の経験はないとしたうえで、この政策の影響を受けるレストランの接客係と話ができれば有益だと話した。
グラム氏は「チップを受け取る労働者の最低賃金を廃止することは恐らく、この労働者にとって良くない。ウェイター、ウェートレスのためにできる最善の策は、新たにレストランをオープンさせ、高い賃金で雇用されることだ。新しくレストランができれば、優秀な従業員が必要になる。その中で賃金は上昇していくものだと思うからだ」と述べた。
ワシントン市議会は2018年に、チップを受け取る労働者の最低賃金を市の通常の最低賃金と同水準にするという有権者からの直接請求を拒否した。
ケネディ氏によると、この時、請求の阻止に取り組んだのは接客係だった。
「レストラン業界が取り組んだわけではなく、チップクレジットやレストランのビジネスモデルが自分たちにとってどういう意味を持っているのかをよく理解している人々がしたことだ」
首都ワシントンの最低賃金は現在、時給15㌦で、チップを受け取る従業員の基本最低賃金は時給5㌦。
ニューヨーク州のアンドリュー・クオモ知事(民主)は2019年、美容師、駐車場の管理人など、一部のチップを受け取る職業の最低賃金を廃止する計画を発表した。接客業は対象外だった。
ニューヨーク市の全体の最低賃金は時給15㌦。これは州内の他の地域でも徐々に導入されている。