バイデン大統領、パリ協定に復帰
By Valerie Richardson and Ben Wolfgang – The Washington Times – Friday, February 19, 2021
バイデン大統領は19日、地球温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」に正式に復帰することを発表した。トランプ政権による離脱を撤回する命令への署名後1カ月で、上院の批准がないまま、協定に再度参加する。
バイデン氏は、オンラインで開催されたミュンヘン安全保障会議でこれを発表した。ブリンケン国務長官は声明で、「米国はきょう、正式に再び仲間入りする」と発表した。
バイデン氏は「気候変動への対策をこれ以上先延ばしにしたり、最低限にとどめたりすることはできない。きょう、米国は再び正式に、パリ協定の一員となる。協定の取りまとめには米国も参加していた」と述べた。
短期間の復帰だが、それとは対照的に離脱には長い時間がかかった。協定の条件によって、離脱には4年かかることになっている。参加から3年間は離脱できず、さらに、離脱の意思を正式に伝えてから1年が必要だからだ。
ブリンケン氏は、「パリ協定のような世界的な活動の枠組みはかつてなかった。米国は計画から、実現まで参加したからよく分かっている。目標は、シンプルで包括的だ。破滅的な地球温暖化を回避し、すでに世界で起きている気候変動の影響に耐えられるようにすることだ」と述べた。
2015年に採択された協定に基づいて米国は、温室効果ガスを2005年の水準と比較して、2025年までに26%~28%減少させることを約束した。これは、世界最大の排出国である中国よりも大幅に厳しく、中国は2030年をピークに排出を減少させることを目標としている。
トランプ前大統領は、協定によって米経済が弱くなると主張し、約束の順守を拒否した。それでも、トランプ氏の在職中、米国は依然として、国ごとの排出量の削減で世界をリードし、発電燃料の石炭から天然ガスへの転換は進み、水圧破砕法による天然ガス価格の低下でさらに拍車がかかった。
バイデン氏は2020年の大統領選で、協定に復帰することを公約とし、気候変動は「実在する脅威」と訴えた。
これを受けて気候変動活動家らは喜んだ。
環境保護団体「エンバイアランメント・アメリカ」の地球温暖化問題担当副部長のアンドレア・マクギムゼー氏は、「この公約によって米国は、現在の特に困難な課題への対処で指導的な役割を果たすことができる」と述べた。
共和党のローレン・ボーバート下院議員(コロラド州)を中心とする共和党下院議員らは1月21日に、上院が協定を批准するまで、協定への予算を阻止する法案を提出した。
オバマ元大統領は2016年に上院共和党の反対を押し切って、大統領令で協定に加入した。共和党は、パリ協定は条約であり、憲法の規定により上院の批准が必要と主張していた。
「ジャンクサイエンス」の創設者スティーブ・ミロイ氏はツイッターで、「上院の批准なく国際条約を実行しようとしており、パリ協定は違法だ」と指摘、協定が強い支持を得ているというのなら「バイデン氏はどうして、上院に提出しないのか」と訴えた。
まもなく発刊される「グリーン・フロード-グリーンニューディールは思っているほどよくない」の著者で、「クライミット・デポ」のマーク・モラノ氏は、「(協定復帰は)バイデン政権による無意味な得点稼ぎだ」と述べた。
モラノ氏はメールで「地球は、国連パリ協定というものが存在するとか、米国が参加しているかどうかなど絶対に気にしない。今は国連の高官でさえ、パリ協定は地球を『救わ』なかった、(二酸化炭素の)排出量は増え続けていることを認めている」と指摘した。
バイデン政権で気候変動対策をリードするジョン・ケリー氏は先月、「パリ協定は十分でない」ことを認め、気候とエネルギーに関して追加の大統領令が必要との見方を示した。
「世界の排出量の90%は、米国外から出ている。米国があしたゼロにしても、問題は解決しない」
民主党は19日、協定への復帰は、米国が気候変動でリーダーシップを取るという重要なメッセージになると主張した。
民主党のアンディ・キム下院議員(ニュージャージー州)は、「傍観していては、この時代の困難な課題に対処できない。パリ協定への復帰を誇りに思う。再び気候変動をリードする時が来た」とツイートした。
ワシントン州のジェイ・インスリー知事は、「気候危機は市、州、国だけでは解決できない。復帰によって、この戦いに勝つために真剣に責任を果たすことを世界に確約した」と述べた。