中国はワクチンを武器として利用して米国を追いやろうとしている

(2021年3月13日)

Associated Press/File

By Guy Taylor – The Washington Times – Thursday, March 4, 2021

 バイデン米政権は、世界の舞台で中国に戦略的に対抗すると述べているが、中国はすでに新型コロナウイルスのワクチンを必要としている国に戦略的に提供することで、友好国と影響力を獲得するためのソフトパワーの戦いで優位な立場を得ている。

 先進国が貴重なワクチンを買いだめしているとの不満が高まる中、中国は45か国以上に約5億回分のワクチン接種を約束することで国際的な注目を集め、ロシアとインドも世界中にワクチンを出荷することを競っている。

 この競争は米国のすぐ近くでも起きている。南部の国境を越えたメキシコでは、パンデミックとの戦いのため、中国とロシアのワクチンを受け入れた。

 一部の科学者の間では、中国製薬大手のシノバックとシノファームが開発したワクチンの有効性に対する疑問が広がっている。こうした専門家は、バイデン政権が米国民に十分な量を確保する前に、米国製ワクチンを他国に提供しないことは賢明だと主張している。しかし、他の人々は、中国がパンデミックを利用して西側諸国に対して冷戦式のプロパガンダ上の勝利を獲得している間、政権は責任を怠っていると指摘する。

 「メッセージや見た目において、現時点でわれわれは明らかに敗れつつある」。デューク大学のデュークグローバルヘルスイノベーションセンターの創設ディレクターであるクリシュナ・ウダヤクマール博士はこう述べる。「今、ペルーやメキシコにいる場合、どこからワクチンを入手できるのか?それは米国ではなく、中国かロシアからだ」

 同氏は「危機の時に誰が彼らを助けたのかについて、各国は長い間記憶するだろう」と指摘。世界中に「米国が再び関与する」と述べているにも関わらず、バイデン政権はワクチンの配布によって「世界の舞台で米国のリーダーシップを再び主張する機会を失っている」と語った。

 AP通信は今週、中国製ワクチンが25カ国以上で接種され、さらに11カ国に届けられたと報じたが、米国製のより高価なファイザーやモデルナのワクチンを手に入れることができたのはほんの一部の裕福な国だった。

 中国の多くのワクチンメーカーのうちわずか4社だけで、年内に少なくとも26億回分を生産できるとAP通信は報じた。世界の人口の大部分は、ニュースの見出しになるような高い有効率を誇る高価な西洋のワクチンではなく、中国のあまり評価の高くないワクチンを接種することになる。

 2種類のワクチンを製造しているインドは1月、近隣諸国への接種を開始し、ロシアは12か国以上に「スプートニクV」ワクチンの接種を行っている。スプートニクVは、世界40か国以上で緊急使用のために登録または承認されており、イランやボリビアなどの国のロシア大使は、同ワクチンが地元の人々に届いた際に大々的に宣伝している。

 中国当局は、ワクチン外交上の競争に利用していることを公には否定している。同国はワクチンを「世界の公共財」と表現している。中国はまた2019年後半に中国の武漢で最初に発生したウイルスへの対応について幅広い批判を浴びたが、同国の専門家はワクチンの配布と中国共産主義政権のイメージを世界で改善する取り組みとの関係を否定した。

 しかし、彼らの言う中国の「寛大さ」と米国の「出し惜しみ」を比較せずにはいられない人たちもいる。

 「2月末までに、中国は69カ国と2つの国際機関にワクチンを支援で提供した。また、ワクチンを28か国に輸出している」と国営の環球時報の編集者であるワン・ウェンウェン氏は4日に書いた。

 「その間、米国は自ら築いた一国主義の壁と長引く『米国第一』の考え方に浸かっている」とワン氏は付け加えた。

国内に焦点を当てる

 バイデン政権の当局者は、中国の新型コロナをめぐる外交攻勢についての質問を無視し、現時点では米国人への接種に焦点を合わせていると強調している。

 米国製ワクチンの供給の一部をメキシコと共有することを検討しているか今週尋ねられた時、ホワイトハウス報道官のジェン・サキ氏はきっぱり「していない」と回答した。

 サキ氏は、米国人が接種を受けた後に「次のステップについて喜んで議論したい」と述べた。

 アントニー・ブリンケン国務長官はまた、政権が中国を米国への最大の脅威と見なしているにもかかわらず、ホワイトハウスが中国にリーダーシップを譲ることを恐れているかどうかについての質問を避けた。

 ブリンケン氏はPBSの「ニュースアワー」に、「数か月の間に、国内の人々に予防接種を行い、すべての米国人が保護されていることを確認しつつ、世界の人々の予防接種を支援することにも取り組んでいく。結局のところ、米国人だけでなく、世界の人々が予防接種を受けるまで、われわれは完全に安全ではないからだ」と述べた。

 ブリンケン氏は、米国が「ワクチンへのより入手しやすくするため、数十億ドルを寄付している」と述べた。

 実際、バイデン政権は2月中旬に貧しい国のためにワクチンを購入し配布する世界保健機関(WHO)による国際的な枠組み「COVAX」に約40億ドルを投じる決定を強調した。

 当局は、WHOとCOVAXの取り組みの両方を拒んだトランプ政権とはまったく対照的な取り組みとして説明した。しかし、バイデン氏によって承認されたこの40億ドルでさえ、ひも付きのものだ。

 バイデン氏は先月の仮想G7先進国主導会議で、米国は半分を前払いし、残りは他のG7諸国が自国の公約を履行することを条件としていると語った。

 米国による世界的なワクチン接種への支援の取り組みは、専門家からさまざまな反応を引き出している。

 「私は控えめなワクチン・ナショナリズムを信じている」とニューヨーク大学グロスマン医学部のアーサー・キャプラン教授(医療倫理)は述べた。同氏は、ワクチンを必要とする他国に提供する外交上の利点があるかもしれないが、バイデン政権が最初に医療従事者など米国の重要な人口集団にワクチン接種したのは賢明だったと語る。

 同氏は「最初に国で最も必要としている人々への対応をしなければならない」と強調した。「自国で起きていることを自らコントロールできなければ、他国を助けるのは難しい。…飛行機内のマスクのルールを考えてほしい。他の人を助ける前に自分がマスクを着用すべきだ」

 カプラン氏は、中国、ロシア、インドがこれまでに行ったことの多くは「中身の伴わない政策」に当たると述べた。共有されるワクチンの総数は、世界の新型コロナ感染率を劇的に低下させるのに十分ではないからだ。

 同氏は「中国が大きな違いを生むのに十分な量を与えているとは思わない。彼らのワクチンがどこまで効果的かどうかすら分からない」と述べた。「国際的な安全保障上の転換の中で、われわれが出し抜かれたり、眠ったような状態になっていることを過度に心配していない」

 同氏さらに、「これらは長期的な外交政策に影響を与えることのない小さなチェスの動きだと思う。なぜなら、それは支援の影響が小さすぎ、好意を得ようととするという点で露骨すぎるからだ。こうした支援のより大きな問題は、われわれがワクチンを多く確保し、大規模に配布できるようになる4、5カ月後には、明らかになるだろう」

準備への圧力

 しかし他の人々は、米国が現時点でもっと取り組むべきだと主張する。

 「米国人がワクチンを接種する中、他国の人への接種をもっと行う必要がある」。ワシントンにあるハドソン研究所アジア太平洋安全保障部長であるパトリック・クローニン氏はこう述べる。

 クローニン氏はワシントン・タイムズ紙に「バイデン大統領による世界的なワクチン基金への40億ドルの提供は、米国のリーダーシップの証明である」と述べたが、「さらに多くのことをなすべきだ」と強調。「より大胆な」動きが米国のためになるかもしれないとし、「ワクチン製造に関する特許を解除する」ことを提案した。

 ワクチンを自力で迅速に複製するための科学的専門知識を持っている国はほとんどないため、特許の問題は厄介だと述べる人もいる。

 こうした中、バイデン政権は、日本、インド、オーストラリアとアジアでワクチンを配布するための共同計画を模索している兆候がある。これらの国は、米当局が中国に対抗するために促進しようとしている非公式の同盟「クワッド」のメンバーだ。

 フィナンシャル・タイムズによると、バイデン政権のインド太平洋政策調整官であるカート・キャンベル氏が今週、クワッド加盟国の大使と数回の会合を開いたと報じた。

 ホワイトハウスは水面下の取り組みについて詳細を語ることを拒否したが、報道官は4日、ワシントン・タイムズに「世界的なワクチンの接種、製造、配達の拡大」は「米国がオーストラリア、インド、日本などの同盟・友好国と定期的に話し合っている問題である」と語った。

 一方、デューク大のウダヤクマール博士は、「クワッドのような既存の枠組みへの依存は、全体的な戦略の一部としては理にかなっているが、アフリカやラテンアメリカでの需要やワクチン外交の取り組みには対応していない」と述べた。

 同氏は「それはまた、二国間、多国間協力に対するCOVAXの役割の問題を未解決のままにしている」と指摘し、米国は近い将来、ワクチンを共有するための取り組みに関する広報文化外交に従事すべきであると付け加えた。

 ウダヤクマール博士はワシントン・タイムズ紙に「われわれは7月までにほぼ確実に自国の需要を超えるワクチンを手に入れるだろう。その過剰分を用いて何をするかについて計画を検討し始める必要がある」と語った。

 同氏は、バイデン政権がワクチンを国際的に提供するためのより積極的な政策を差し控えている可能性があると付け加えた。現時点でそのような政策を推進すれば、議会に国内の新型コロナ救済法案を可決させるために政府がすでに抱えている問題を複雑にする可能性があるためだ。

 しかし、ウダヤクマール博士は、「われわれが6月か7月にワクチンを提供可能だと話をするだけでも、米国が在庫を抱え込んでいる一方、インドや中国、ロシアがワクチンを提供しているという現在広まっている話よりずっと良いだろう」と述べた。

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