ICEを守り、聖域都市と戦う 国土安保長官が強調

(2021年4月15日)

President-elect Joe Biden’s Homeland Security Secretary nominee Alejandro Mayorkas speaks at The Queen theater, Tuesday, Nov. 24, 2020, in Wilmington, Del. (AP Photo/Carolyn Kaster)

By Stephen Dinan – The Washington Times – Tuesday, April 6, 2021

 国土安全保障省のアレハンドロ・マヨルカス長官は、移民税関捜査局(ICE)との協力を拒否している「聖域都市」と対決する用意があり、国境を越える不法移民の刑事訴追を増やす意向だと表明した。

 その上で、ICEを廃止、分割する案を否定、バイデン大統領周辺の一部から出ている、ICE完全廃止要求を拒否した。

 マヨルカス氏は先週、ICE職員とのオンラインタウンフォーラムで、強硬な姿勢を示した。ワシントン・タイムズがその際の会話のメモを検証、マヨルカス氏は、不法移民をどのように、どのようなタイミングで逮捕し、退去させるかに関する新たな国外退去ガイドラインの作成に取り組んでいることを明らかにしていたことが分かった。

 ICE職員からの、職務に対する国民からの反発が強いとの不満に対しマヨルカス氏は、ICEには「高貴な使命」があると応じた。

 「ICEの廃止には反対だ。私が必要だと思っていることとはまったく逆だからだ。方針、慣行を強化し、ここで何をし、どうしてそうしているのかをもっと効果的に伝える必要があると思っている」

 その発言の中で最も驚くべきは恐らく、刑事訴追する不法移民を増やすという部分だろう。通常、不法移民には行政法で対処し、罰則は科されない。しかし、許可なく入国することは、合衆国法典第8編第1325条で軽犯罪とされ、退去後再度入国すると、第8編第1326条で重罪となる。

 マヨルカス氏は「拘束され、追い出された人々は刑事訴追されるべきだと思っている」と述べた。

 また「率直に言うと、これらの人々の中に、なぜ第8編第1326条の事例に当てはまらない人々がいるのかを理解する必要がある。この点について司法省と協力する」とも述べている。

 この発言は、移民の権利擁護団体から反発を呼びそうだ。すでに、現行の移民制度は不法移民を犯罪者として扱う傾向が強いとの指摘が権利擁護団体から出ている。

 カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)法科大学院の教授らからなるグループは先月、1326条はその起源から差別的だと主張する弁論趣意書を最高裁に提出した。

 その中の一人、アヒラン・アルラナンセン氏はワシントン・タイムズに、「私の考えでは、過去に一度も罪を犯していない人物を1326条に基づいて訴追すべきだという主張はなされるべきでない。マヨルカス長官が1326条のルーツを知っているかどうかは分からない。しかし、このことを知らずに、この条項に基づいて訴追し(私が何年も前からしているように、弁護し)ている人が多くいることは確かだ」と述べた。

 ワシントン・タイムズは、国土安保省にこの点や、フォーラムでのマヨルカス氏の発言についてコメントを求めたが、コメントを拒否、「省の職員が参加した内部の話し合いであり、議論されている問題、法の執行という微妙な問題も含まれている」と主張した。

 マヨルカス氏の発言について複数の現職、元職の国土安保省職員に問い合わせたところ、発言の一部は、職員にとって違和感はないかもしれないが、実際に実行する意思があるのか、可能なのかというと疑問だとの答えが返ってきた。

 そのうちの1人で、ICEの元職員、現在は移民研究センターに所属するジョン・フィーア氏は、聖域都市と戦うというマヨルカス氏の宣言は無意味だと思うと指摘した。マヨルカス氏の国外退去政策は範囲が狭く、聖域都市が守ろうとしている不法移民の多くはその政策に基づいて解放されるからだ。

 フィーア氏は「マヨルカス氏は、聖域都市の方針は不合理で、殺人犯ですらも解放する可能性があると考えているようだ。だが、しようとしていることは依然として、バイデン政権の狭い法執行構想の範囲内に収まっている。バイデン政権の国土安保省によって、何千人もの移民の犯罪者が、省の方針のもとで自由になっている」と述べた。

 別の国土安保省の元高官は、マヨルカス氏がICEに言っていることは正しいが、実行できるかどうかは疑わしいと述べた。

 「この政権はいろいろなことを言っているが、誠意があるふりをしていると思えることがよくある。実行できないことは分かっているのに、聴衆に対しては、できると思っているふりをする。そういうのを見てきた」

 ICEは、複数の主要な部署に分かれている。総勢5000人ほどの国外退去部隊、「執行・退去活動(ERO)」と呼ばれている。「国土安全保障調査部(HSI)」は7000人の職員を擁し、人身売買、犯罪組織の活動、児童ポルノまであらゆることを調査する。主席法律顧問局は、移民裁判所での裁判を扱う。

 先週行われたフォーラムでは、これらの部署の職員らが、今回の移民の急増に厳しく対処するよう求めた。

 ある職員は、国土安保省の国境での不法移民への対応は、新型コロナウイルスについては米国民よりも寛容だと指摘。バイデン政権の国境政策の変更に疑問を呈し、トランプ政権の対応の方がうまくいっていたと言う職員も複数いた。

 「著しくモラルが低い」、連邦政府からの支援がないと非難する職員もいる。ICEの現場職員の「人種差別、外国人嫌い、不寛容、激しい言葉遣い」への対応を求める職員もいる。

 2001年の同時多発テロの余波を受けて設置されたICEを分割し、HSI、EROを別々の組織とすべきではないかという意見も多くある。

 あるHSI職員は、聖域都市は、国外退去を実施していることを理由にICEへの協力を拒否しているが、他の犯罪捜査でも協力できないという悪影響も出ていると指摘した。

 しかし、マヨルカス氏は、分割では解決できないと考えており、「HSIとEROに分割すべきでない」と述べている。さらに、過激な聖域都市には、ICEへの協力拒否に対する「包括的指針」で対処することを約束した。

 「その権限はある。これは重要だと考えている。教育が必要だと思っている。何を、どのようにすべきかに関して市職員をしっかり教育すべきであり、米国民も教育すべきことがたくさんある」

 マヨルカス氏はオバマ政権当時、米市民権移民局局長を務め、その後、ジョンソン国土安保長官のもとで副長官の職に就いていた。

 マヨルカス氏は、ICE職員に、聖域都市を取り戻すために交渉を試みたことを明らかにし、成功したところもあったが、失敗したところもあったと述べている。

 「ある区域では、保安官や警察署長と交渉したこともあった。分かっていると思うが協力はできないと言われた。12年前の飲酒運転で逮捕するようなことはできない。協力はできない。コミュニティーの政治が許さない」

 「そこで私は、そこは協力できないというのなら、どこなら協力してくれるのかと聞いた。12年前、8年前、2年前の3回、飲酒運転をした人のことで対立した。このような人への対応で今後、協力していきたい」

 「重性犯罪で起訴され、有罪となった人に関して協力できないだろうか。高級住宅街に行くのでなく、移民コミュニティーに戻ることになる人のことで協力できないだろうか。協力できるところはあるはずだ。答えは、イエスの時もあった。その場合は話を進める。ノーの時もあった。その場合は、どのように対処するかを考えなければならなかった」

 トランプ政権は、犯罪歴のある不法移民を主に標的とする一方で、不法に国内に滞在している個人の退去を要請することを職員らに認めていた。

 調査機関「トランザクショナル・レコード・アクセス・クリアリングハウス(TRAC)」によると、バイデン政権では、ICEの規則が大幅に厳格化された。優先順位が付けられ、ICEの受け入れ数が62%減少したのはその一例だ。

 マヨルカス氏は、これらのルールの厳格化を擁護した。

 「私がこれまでかかわってきたり、働いてきたりしてきたすべての法執行機関は、優先事項があった。資源が無制限にあるわけではないからだ。どこに線を引くかについては異論もあるだろう。今後数週間でそれらについて話し合う」

 マヨルカス氏は、ある程度の「裁量」を認めることを約束し、最終的なガイドラインは「変更不能」ではないと強調した。

 マヨルカス氏は今年に入って、ICEのごく一部の職員との対話の中で、政府内で「1801系」と呼ばれる、退去担当職員の職務分類を変更し、「1811系」と呼ばれる「犯罪捜査官」とする考えを示した。

 現職、元職のICE職員らは、官僚的な組織の再編で退去実行部隊をなくしてしまおうとしているように見えると指摘する。

 マヨルカス氏は先週のフォーラムで、オバマ政権の国土安保省副長官だったときに、ニューヨークなどで退去活動に参加したことがあり、ERO職員は1801系に分類されているが、容疑者を追跡し、監視するのを見ると、実際の活動は1811系の職員のようだと述べていた。

 「1801と1811の違いには詳しくないが、…今ここで、どのような職種なのかと聞かれれば、1811だと私は思うと答えるだろう。なぜ1811に分類されていないのかその理由は知らない」

 また、国土安全保障諮問委員会を廃止する決定を擁護し、視野を広げる必要があったからだと述べた。

 マヨルカス氏は、排斥された人々の中には、「私の親しい友人」もいたと指摘、決定が政治的動機からではないことの証拠だと強調した。

 「私的な部分はない。任務であり、最良の成果を上げるためだ」

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