就任100日、左傾化強めるバイデン政権
By Dave Boyer – The Washington Times – Thursday, April 29, 2021
バイデン大統領は就任から100日間、左翼的な政策を意欲的に推進、その中で一つつまずきがあったとすれば、エアフォースワンへの搭乗時にタラップでよろけたことくらいだ。
1兆9000億㌦の新型コロナウイルス経済対策は、バイデン氏の国内政策の最初の主要課題だったが、共和党から1議席の賛成も得ないまま議会を通過させた。民主党は、4兆1000億㌦のインフラ・社会的セーフティーネット計画も、わずかに有利な議席数を基に通過させた。
バイデン氏が指名した多様性に富む政府高官らのうち2人を除く全員が、50議席対50議席の上院で承認された。この2人は、ニーラ・タンデン氏とエリック・ランダー氏だ。タンデン氏は、行政管理予算局(OMB)長官に指名されたが、数多くの上院議員をツイッターで激しく非難していた。ランダー氏は、科学担当大統領補佐官に指名されていたが、性犯罪で収監され、獄死したジェフリー・エプスタインとの交流があったことが問題視された。
バイデン氏は、就任100日の1日前に行った上下両院合同会議での演説で「米国は復活する。恐怖よりも希望を、うそよりも真実を、暗闇よりも光を選ぶ。100日間の救済と再生を経て、米国はすぐに飛び立つ」と述べた。
共和党は、バイデン氏が気候変動、銃規制などの問題で急激に、一方的に左傾化していることに強く反発している。共和党のミッチ・マコネル上院院内総務(ケンタッキー州)は今週、バイデン政権を「急進的な左派にすべてを任せているかのような統治をする政権」と呼んだ。
しかし、共和党は、バイデン氏の計画を修正したり、阻止したりすることはできなかった。議会での最大の障害を設けているのは、選挙で選ばれていない議事運営専門家だ。バイデン氏による最低賃金の時給15㌦への引き上げは予算規則に反しているという判断を下した。
デューク大学の「ポリス-政治学センター」のポープ・マコークル所長は、「どの評価でも、就任後100日で、反トランプ感情だけで選挙に勝っただけの張り子のトラではないことが証明された。預言者ではないが、よくやっている」と述べた。
経済は、トランプ大統領が始めた新型コロナワクチン計画に助けられて、2月と3月に120万人以上増加した。歴代の新大統領の下で最も速いペースだ。
これ以上の政府支出は必要ないと主張する保守派経済学者スティーブン・ムーア氏は「経済は、今後6カ月から9カ月でかなりよくなると思う。かなりの勢いで回復している」と述べた。
実際に、経済分析局の29日の発表によると、先の四半期の成長率は、年率で6.4%と好調だ。今四半期はさらに高くなるのではないかとみられている。先週の失業給付申請者数は感染拡大後最低の55万3000人にまで低下した。
バイデン政権下でワクチン接種は、当初の目標以上の進展を見せているが、就任後100日間で大部分の学校を再開するという選挙公約は守られなかった。
移民に関しては、イスラム教徒が多数派の国からの入国禁止などトランプ氏が採った政策を短期間で廃止した。ところが、バイデン氏とハリス副大統領は、南部国境での移民急増への対応では苦戦を強いられている。
マコークル氏は「移民問題は、トランプ氏の支持基盤だけでなく、多くの有権者にとって、大統領を評価するための重要な試験だ。移民はやはり、十分に注意を払うべき問題であり、国民はバイデン氏の様子をうかがっているところだ」と述べた。
バイデン氏は、1万5000人の難民受け入れの上限を引き上げないと発表して支持者の反感を買った。左派は反発し、ホワイトハウスは態度を変え、来月、計画を見直すことを約束した。
国境付近の法執行機関やコミュニティーに緊張が走る中、政権は急増する移民をコントロールできず、感染した移民が新型コロナを米国に持ち込むのではないかという懸念が高まった。フェンタニルなど薬物の密輸が増加していることが明らかになっており、広い範囲にまで影響は広がっている。
共和党のビル・ハガティ上院議員(テネシー州)は最近行ったインタビューで、「違法な薬物の売買が増加している。ここテネシー州で増加した。国境警備が緩いからだ。コヨーテ(不法移民仲介業者)は、不法移民の家族を米国に送り込む一方で、薬物、現金、銃を国境を越えて運んでいる」と述べた。
バイデン氏が取り組んでいる課題の中で最も広範囲に及ぶのは恐らく、気候変動だ。この問題は、ホワイトハウスからのあらゆる提案にかかわっている。バイデン氏は、パリ協定に復帰し、2050年までの米経済の「脱炭素化」を約束、オバマ元大統領よりもさらに大胆な排出削減に取り組もうとしている。
バイデン氏は、法人税、キャピタルゲイン税、年収40万㌦以上の個人への税の引き上げを提案しており、保守派は、米国の雇用を国外に流出させようとしていると訴えている。
「雇用創出ネットワーク」のアルフレド・オルティス会長は、「最初の100日間は、バイデン氏と民主党の小企業への宣戦布告だった。小企業は、新たな雇用の3分の2を生み出す。小企業が消えれば、雇用も消える」と述べた。
警察の取り締まり、人種間の平等についてバイデン氏の発言は、著しく少数派寄りだが、警察署への予算カットは要求していない。
共和党は、少数派に歩み寄るというバイデン氏の公約はうそだったと指摘した。
共和党のジョン・ホーリー上院議員(ミズーリ州)は、「バイデン氏が、女性のスポーツの否定、エネルギー雇用の否定、キーストーン・パイプラインの拒否、修正第2条の権利の否定以外のことをするのを見たいものだ。100日たつが、極左の支持基盤に完全に専念している」と述べた。
外交では、トランプ氏が採った政策の多くを廃止している。核交渉をめぐってイランとの関与を復活させ、ドイツからの米兵の撤収を中止、北朝鮮に対しては注意深く、トップ同士の外交には慎重だ。
バイデン氏は、サイバー攻撃、選挙干渉をめぐってロシア人数十人に制裁を科したが、対中国関係などの課題は感染拡大と国内の予算増のためにわきにやられている。
保守系シンクタンク、ヘリテージ財団の国家安全保障専門家ジェームズ・カラファノ氏は「どんどんリンドン・ジョンソンに似ていく。国内政策に非常に意欲的で、外交は後回しになっている。しかし、世界はその間、じっと黙って見ているわけではない。競争相手はばかではない。何をしているかは分かっている」と述べた。
1人の政権高官が今週、記者団にバイデン氏の国家安全保障と外交への取り組みは「派手」ではないが、トランプ政権からの変化は重要なことではないと述べた。
この高官は匿名を条件に「国家安全保障の意思決定プロセスを緻密で、包括的で、確かな情報に基づいたものにするために、膨大な作業を行ってきた。前政権のやり方とはほぼ完全に決別した。専門知識はわきにやられ、判断は広範囲の情報やプロセスをへることなくその場で下されてきた」と述べた。
この高官は、前政権からの変化の例として、バイデン政権のロシアへの制裁、9月11日までのアフガニスタンからの全米兵撤収を挙げた。
「アフガン、ロシアを含む長期的な政策決定については、政策が最良の形で実行されるように、その場で片付けることはせず、政府内の重要職の高官の承認を得て適切な答えを得るようにした」