コロナ禍の米、自立から社会主義へ
By THE WASHINGTON TIMES – Sunday, May 9, 2021
ANALYSIS/OPINION:「アメリカでは、私たちは政府をあがめることはしない。私たちは神をあがめるのだ」。
これは、(共和党の)ドナルド・トランプ氏が遊説中に使って、決まって拍手喝采を浴びたセリフだった。
だが、前大統領の支持基盤を含む米国人のかなりの部分が、そうは思っていないかもしれない。多くの人にとって、政府は希望の的であって、新型コロナウイルスのパンデミックによってずたずたにされた経済再建を成し遂げるための主要な担い手に違いない。米国人が極めてヨーロッパ流になびいているように見えることは、自由の未来にとって不吉な兆候である。
ピュー・リサーチ・センターの最新の調査によると、米国、フランス、ドイツ、英国の市民のかなりの割合が、彼らの経済システムに「大規模な見直し」が必要だと考えている。最も強い不満を持っているのはフランス人で、58%が大規模な変更を望んでいて、さらに、12%が全面的な改革を求めている。経済の大幅な修正、または、全面的な修正を求めているドイツ人と英国人の割合はそれぞれ50%。新型コロナ禍でも世界一の経済を維持している米国人も同様の考えをしており、半分が大きな変化を歓迎している。
確かに、世界的な景気後退が家族の財産に及ぼす影響をめぐって、大西洋の両岸に苦しみが拡大していることには十分な理由がある。米国と、その欧州の友好国はどこも2020年に深刻な経済的損失を被った。国際通貨基金(IMF)によると、米国の国内総生産(GDP)は3.5%減少した。ドイツは4.9%、フランスはさらに悪く8.2%。英国は最悪で、9.9%減だった。
勤勉な市民らは、先が見えず困り果てているかもしれないが、良い時代がそこまで近づいている。IMFは、2021年の力強い景気回復の到来を予測している。ドイツ経済は3.6%、英経済は5.3%、フランス経済は5.8%の急増が予測されている。米国のGDPは、6.4%成長で、それらすべてを上回ると予測されている。
ところが、ピューの世論調査によって、調査対象国の中で、政府の経済的介入に対する強力な支持があることが分かった。英国は、より多くの公営住宅を建設し、ユニバーサル・ベーシック・インカム(UBI)(注)を全員に提供するなどの最も強力な支持を示している。
意外だが、米国は、貧困層への手当を増やし、裕福な人々へ増税する熱意という点でドイツと並ぶ。米国が伝統的に自立を大切に思うことや、フランスが社会主義を強く信奉していることを考えると、社会主義的政策に対する米国の関心の深さが、フランスをさえ超えていることは、ますます心配である。
この転換の説明として、理解できることが一つだけある。パンデミックを乗り越えるための命綱を探している米国人は、やる気を捨てて、政府の援助物資を愛するようになりつつあるというわけだ。新型コロナ感染症に関連して政府が給付するカネ、インフラ、「グリーン(環境に優しい)」経済の法律制定などで、バイデン大統領や民主党は、米国人を米国の政府に福祉を頼るように訓練しているのだ。明らかに、フランス人は、そのようなことはうんざりするほど経験しているので、事態はそんなに甘くはないと思っている。
政府は人命を救うためにウイルスと闘う重要な役割を果たしたが、米国人は生きながらえて、政府に米国経済をヨーロッパ流の社会主義の形に作り替える口実として、パンデミックの利用を許したことを後悔するかもしれない。
注:最低限所得保障の一種で、政府がすべての国民に対して一定の現金を定期的に支給する政策