G7が初めて台湾への支持を表明
By Bill Gertz – The Washington Times – Wednesday, June 16, 2021
先進7カ国首脳会議(G7サミット)が声明に盛り込んだ強い文言に中国政府が反発、挑発的な軍用機の飛行を強化した。
G7は声明で「我々は、包摂的で法の支配に基づく自由で開かれたインド太平洋を維持することの重要性を改めて表明する。我々は、台湾海峡の平和及び安定の重要性を強調し、両岸問題の平和的な解決を促す自由で開かれたアジア太平洋を守る」と表明した。
声明は、先進7カ国、米国、英国、カナダ、フランス、ドイツ、イタリア、日本の考えを反映したもので、中国政府にウイグル族など中国国内の少数派人権を尊重し、新型コロナウイルスの発生源への調査で、世界保健機関(WHO)と協力するよう呼び掛けている。
G7が台湾への支持を表明するのは初めて。中国政府は、中国南部の沿岸から約160キロ沖合の島、台湾を分離した自国の一部とみている。
声明の翌日、ベルギーで開催された北大西洋条約機構(NATO)首脳会議も声明で、中国を国際秩序への「組織的な挑戦」と強く非難した。
NATOの声明は、「(NATOの基本条約である)ワシントン条約に盛り込まれている基本的な価値観に反するこれらの強圧的な政策に懸念を抱く」と指摘した。
「中国は核戦力を増強させており、核弾頭、先進的な運搬手段を増やし、核のトライアド(3本柱)を確立に取り組んでいる。軍の近代化と、公式に表明している軍民融合戦略の実施については透明性が不足している」
中国は、G7の声明に台湾が盛り込まれたことを受けてまず、14日に過去最多の軍用機を台湾の防空識別圏(ADZ)に侵入させた。H6爆撃機4機、殲16戦闘機14機、殲11戦闘機6機、Y8対潜哨戒機2機など計28機の中国軍機がADZに侵入した。
その後、中国国営メディアは異例の厳しいコメントを報じた。人民解放軍(PLA)の元上級大佐、バオ・ミン氏は、中国は、台湾をめぐって紛争が起きれば米国と日本を攻撃すると宣言すべきだと主張した。
「中国は、台湾海峡での紛争に軍事介入した場合、中国と日本がどのような事態に直面するかについて世界にはっきりと表明する必要がある」
バオ氏は、まず、日本、韓国などの地域内のすべての米軍基地を、長距離の兵器で標的とすべきだと主張。次いで、米軍への補給に使われている自衛隊の基地を標的とし、「PLAがただちに破壊する」と表明することを訴えた。
最後に、地域内の米軍を支援する日本の軍事力が攻撃を受け、「無差別に破壊される」とバオ氏は述べた。
また、バオ氏は、日本が台湾海峡紛争に本格的に介入すれば、中国は「日本に宣戦布告」し、PLAは、海峡での戦争を日本の四島にまで拡大し「自衛隊を完全に排除する」と強調した。
バオ氏は「要するに、日本の本島のすべての軍部隊、戦略的標的が、PLAのミサイルの攻撃対象となる」と指摘、台湾海峡の戦争は、日本の四島に拡大し「自衛隊が完全に排除されるまで」続くと主張した。
G7の声明はさらに、戦略的に重要な南シナ海支配への中国の取り組みについて懸念を表明している。南シナ海では、面積約13平方キロの島々が造成され、2018年以降、軍が駐留している。中国が領有を主張する無人島、尖閣諸島の支配を求める中国政府による日本への圧力も、言及された。
「我々は、東シナ海及び南シナ海の状況を引き続き深刻に懸念しており、現状を変更し、緊張を高めるいかなる一方的な試みにも強く反対する」
中国政府報道官は、G7声明を非難した。
中国の台湾事務弁公室の馬暁光報道官は、緊張を高めたと台湾を非難した。
「外国勢力による、台湾の独立の試み、台湾問題への無作法な介入を座視することはない。これらの共謀には強く対処する必要がある」
中国外務省の趙立堅報道官は北京で記者団に対し、「声明の内容は、これらの国々の相互関係の範囲を大きく逸脱し、中国の国内問題に著しく干渉、中国を意味もなく中傷し、非難している」と述べた。
習主席、PLAの核兵器支配
米国防大学の中国軍問題研究センターのフィリップ・ソーンダース所長は、米連邦議会の米中経済安全保障見直し委員会で、増強が進む中国の核ミサイル、爆撃機、潜水艦の指揮管制システムをめぐって証言、新システムの下で中国が、核先制不使用から、核戦争を想定した戦略へとシフトしたとの見方を示した。
ソーンダース氏は、中国は核戦力の増強を急速に進めており、小規模で未成熟だった戦略軍は、「はるかに大規模で、技術的に進んだ、多様な核のトライアド(ミサイル、爆撃機、潜水艦の3本柱)」へと変貌、「中国共産党の指導者らは、新たな戦略的オプションを手にした」と述べた。
ソーンダース氏によると、中国軍は新型のミサイル、爆撃機、潜水艦に加えて、核指揮管制システムの拡充に取り組んでいる。そのほとんどは明らかにされていないが、新システムによって、先制不使用をうたっていた核政策は「敵国からの第一撃への抑止力から、『警報即発射(LOW)』または『核戦争』を想定した政策」へと変化したという。
ソーンダース氏は証言の中で、中国共産党中央軍事委員長でもある習近平国家主席が、核兵器使用の最終権限を持っているものの、その権限は軍事委内での習氏の影響力に懸かっているとみていることを明らかにした。
有事の核攻撃の命令は、中国共産党政治局または習氏ら7人から成る政治局常務委員会から出される。ソーンダース氏は、「中国共産党は以前から『党が銃を統制しなければならない』と主張し、軍事目的よりも政治目的の優位性を強調してきた」と述べた。
核兵器発射の命令は、北京郊外の「西山」と呼ばれる地下施設に設けられている中央軍事委員会合同作戦指令センターに送られる。命令はその後、中国軍ロケット軍本部に送られ、ミサイル基地、発射施設へと伝えられる。
中国の弾道ミサイル潜水艦部隊は、6隻の094型原子力潜水艦(晋級)を保有しているが、深海航行中の潜水艦に発射や警戒の命令を伝えることが「非常に大きな作戦上の課題」になっているという。
中国軍は、超低周波帯の送信機を開発し、潜水艦に指令を送っているが、水深90㍍以上を航行する潜水艦と通信可能な低周波帯の無線機と衛星通信の開発に取り組んでいる。
裏目に出た共産党員への支援活動
中国共産党が、マルクス・レーニン主義政党の創設100周年を記念する準備を進める一方で、復旦大学で最近発生した出来事は、党に対する強い反発が国内の一部で生まれていることを示している。
中国有数の名門校である同大当局は、今月に入り、6月7日にナイフで襲われ、殺害された同大学の高級党書記である王永珍氏(49)の遺族に対する支援を組織しようとした。
その数日後、同校の数学教授、姜文華が逮捕された。報道によると、姜は王氏による政治的処罰の対象となっており、上海の学内で殺害したことを自白した。
復旦大学同窓会は6月15日、王氏の遺族を支援するための募金活動を開始し、声明で、王氏を殉職した英雄と称えた。
王氏は党委員として、大学の思想的純化を担当。人権や言論の自由をめぐる欧米の思想が広まらないようにすることに責任を持っていた。その主要な責務は、党への不忠を助長する考え方を抑制することだった。
一方、大紀元時報は、学内で王氏に対する反発が広がっていることを最初に報じた。それによると、王氏の評判は悪く、学生の反対意見を抑圧する政治活動を行っていた。また、1人の女子学生を精神病院に入院させ、そこでこの学生は自殺したという。
この募金活動をめぐって予想外のことが起きた。中国のソーシャルメディア上で激しい議論が起こり、殺害された党書記を批判し、代わりに姜への支援を求めるコメントが多数寄せられた。
殺害された党員ではなく、姜を支持する96件以上のコメントが今週、大紀元に掲載された。
これら批判的なコメントの中には、「復旦大学、姜先生への募金を開始してください」「数学教師、姜先生の連絡先は分かりますか。姜先生に募金したい。とても厳しい状況に置かれているから」「姜先生に寄付しましょう。全国の人が喜んで寄付してくれるはずです」などというものもあった。
さらに別のコメントは、「王氏は、お金に困っていたわけではなく」、大学は王氏に中国共産党の旗を与えればよいとした上で、「姜氏への送金方法を教えてほしい」と述べていた。党幹部は殺されて当然であり、その犯人は英雄だとするコメントもあったという。
中国専門家によると、この異常なまでの支持の高まりは、中国国内で中国共産党に対する反発が強まっていることを如実に物語っているとみている。
これを受けて中国の検閲当局は直ちに否定的なコメントを取り締まり、投稿した数人のソーシャルメディア微博(ウェイボー)のアカウントを停止した。
中国とハンガリーは最近、復旦大学の分校を首都ブダペストに開設することで合意していたが、ブダペストではこれに反対する人権擁護グループによる抗議デモが発生、批判は復旦大学へも向けられた。デモ参加者は、北京の権威主義的な指導者との合意に反対した。