バイデン氏、海外の石炭火発への支援停止表明 米国のエネルギー産業は反発
By Haris Alic – The Washington Times – Tuesday, June 15, 2021
米国のエネルギー産業は、海外の石炭火力発電への公的支援を停止するというバイデン米大統領の約束を非難、民主党の「石炭戦争」の表れだと指摘している。
全米鉱業協会(NMA)のアシュレー・バーク上級副会長は、燃料目標を設定し、石炭の価値を下げることは世界の気候問題の解決にはならないと述べた。
「石炭は、電力供給、価格、信頼性をめぐってバランスが取れるという点で非常に重要であり、とりわけ、世界が、持続性が弱く、天候に依存する電源に移行している時であり、その重要性は高まっている」
英国での先進7カ国との会合で、バイデン氏ら各国首脳は、炭素回収技術を取り入れない国外の新たな火力発電への公的資金による支援を停止することで合意した。
各国は声明で「衰えることのない石炭への世界の投資はすぐに止めなければならないことを訴え、2021年末までに衰えることのない世界の石炭火力発電への政府の新たな直接支援は終わらせることを約束する」と表明した。
炭素回収技術はまだ初期段階にあり、広く普及させることができないことを考えれば、この約束は石炭を恒久的に放棄させるよう開発途上国に圧力をかけることになる。
米国の石炭産業と、そこで働く5万人以上の従業員にとって、バイデン氏の約束は、「石炭戦争」の中の戦いの一つでしかない。
石炭戦争は、温室効果ガス排出削減によって気候変動との戦いを始めたオバマ政権時代にまで遡る。その目標を達成するため、オバマ政権の環境保護局(EPA)は、米国の発電の主要エネルギー源だった石炭に厳しい規制を課した。
米国の温室効果ガス排出量は、2009年~2017年の間に減少したが、8万3000以上の石炭関連の職が失われた。失われた職のほとんどが、ウェストバージニア州、オハイオ州、ペンシルベニア州などの農業州、工業州だった。
石炭産業での雇用喪失は、トランプ前大統領が、2016年の大統領選で、ブルーカラー、特に、中西部の工業地帯のブルカラーからの強い支持を獲得した一因だった。
トランプ氏は大統領に就任すると、国内の石炭産業の復活に取り掛かったが、国内の動向、石炭に代わって天然ガスが発電に利用されるようになったことから、その目標達成は困難になった。2019年に米国内で産出された石炭の量は、1978年以降で最少だった。
バイデン氏は大統領就任後、石炭産出量の減少を逆転させる意思のないことを示した。ホワイトハウスは特に、2035年までの100%排出ゼロ発電を提起している。
この方針は明らかに、石炭・天然ガス産業を標的としたものであり、エネルギー情報局(EIA)によると、石炭、天然ガスの両者で、米国で消費される全電力の63%を生み出している。
バイデン氏と民主党員らは、温室効果ガスの排出を削減する唯一の方法は、発電部門に働き掛けることだと主張している。EPAによると、米国の全排出量の25%は、発電で発生している。
ジェニファー・グランホルム・エネルギー長官は、「誰もがそうなってほしいと思っている。クリーンエネルギーの供給を創出するための需要側からの戦略だからだ」と述べた。
しかし、石炭の支持者らは、気候変動との戦いか、このエネルギー源の排除かという間違った選択をしようとしていると主張。炭素回収への投資を増やす必要があり、その技術が効果を出すようになるまで時間がかかることを考えれば、石炭は気候変動への解決策のの一部となりうると訴える。
共和党のデービッド・マッキンレー下院議員(ウェストバージニア州)は、真剣に話し合えば、、再生エネルギーでは、世界の日常のエネルギー需要を満たせないという事実が分かるはずだと述べた。「化石燃料由来のエネルギーを標的にするという非現実的な政策よりも、技術の商業化に集中的に取り組むべきだ。これによって、石炭と天然ガスの使用を継続することが可能になる」
この点に関して、ホワイトハウスからのコメントは得られなかった。
バイデン氏が海外の石炭火発への連邦補助金停止を約束する一方で、議会でも民主党が同様の取り組みを進めている。
上院金融委員会の民主党委員らは先月、石油、天然ガス、石炭産業の連邦税の控除を廃止する法案を通過させようとした。委員会での審議は行き詰まり、民主党は、年内の予算審議の中で、本会議に提出する構えだ。
金融委員会のロン・ワイデン委員長(民主、オレゴン州)は、「最悪の気候変動を招かないようにする機会が失われようとしている。この危機に今取り組むべきだ。エネルギー政策は税金政策であり、連邦税法は、現在のエネルギー危機に対処するには全く不十分だ」と述べた。