中国のミサイルに備えパラオに新レーダー、グアム防衛強化へ
By Bill Gertz – The Washington Times – Wednesday, January 4, 2023
米国防総省は、南太平洋への新レーダーシステムの配備に取り組んでいる。米軍の主要拠点の一つ、米領グアムへの中国からのミサイル攻撃に備えるためだ。
国防総省は昨年12月下旬、広域をカバーできる超水平線レーダーのパラオへの配備計画を発表した。1億1800万ドルを投じて、強化コンクリートでレーダーの基礎を設置する。
同じ日、米防衛大手ロッキード・マーチンは、国防総省ミサイル防衛局とグアムのミサイル防衛拡充契約を交わした。国防総省では、イージス・グアム・システムと呼ばれている。
中国の空母「遼寧」がグアム近海に初めて展開したことが明らかになっており、グアムの防衛力強化は米軍にとって急務だ。
国防筋によると、遼寧と随伴艦が、グアム近海で演習を行い、約260回の離着艦を実施した。12月17日~27日までグアム近海にとどまり、米軍施設への監視を行っていたという。
イージス・ミサイル防衛システムは、駆逐艦に搭載され、その効果を発揮してきたが、グアムに配備されるイージス・システムは地上配備型で、「イージス・アショア」と呼ばれる。高性能フェーズドアレイレーダーシステム「SPY7」を搭載し、全方位の空と宇宙を監視する。迎撃ミサイルには、弾道ミサイルに対処できるSM3が使用され、巡航ミサイルはSM6で迎撃することになる可能性があるという。2027年に完成する予定。
ミサイル防衛局は昨年3月、グアム防衛の強化に約9億ドルを投じる計画を明らかにした。この計画には、イージス・システム、高高度防衛ミサイル(THAAD)の配備が含まれる。THAADはグアムにすでに配備されており、イスラエル製の迎撃ミサイル「アイアン・ドーム」も一時的だが運用されている。将来は迎撃ミサイル「パトリオット」も加わり、航空機、ミサイルによる攻撃に対して「層状防衛(レイヤード・ディフェンス)」を構築する。
中国は、中距離ミサイル「東風26」を配備している。「グアム・キラー」と呼ばれる東風26は道路移動式で、米国立公共政策研究所によると、「通常弾頭、核弾頭どちらも搭載でき、グアムに到達可能な中国初の精密誘導ミサイル」。
グアムに駐留する米軍は、中国本土からの台湾攻撃に対する防衛で大きな役割を果たすことが想定されている。米インド太平洋軍は、台湾を巡って中国との戦闘が起きれば、戦略爆撃機B52、B2、B1が配備されているグアムがミサイルの標的となるとみている。
ニュースサイト「ユーラシアン・タイムズ」が公表した衛星写真によると、中国は新疆ウイグル自治区の砂漠にグアムに似た形状の標的を設置し、ミサイル攻撃の演習を行っている。空母や駆逐艦の模型も標的として設置されているという。
中国は20年にはグアムのアンダーセン空軍基地を攻撃する動画を作成し、ネットで公開している。
パラオは、グアムから約1300キロ離れており、米軍の軍事演習にも使用されている。パトリオット・ミサイルの演習が最近、実施されたばかりだ。
パラオに配備されるレーダーは、TACMOR(戦術移動式超水平線レーダー)と呼ばれる。監視能力は大幅に強化され、従来のレーダーより探知距離は数千㌔も延びるという。
海軍はTACMORとともに、レーダーで集めたデータを遠隔のオペレーションセンターに送り、米国、同盟国にリアルタイムで共有する通信施設を建設する。26年にも完成する予定だ。