「目をさませ!」:イスラエル新首相、バイデン大統領の対イラン核交渉を叱責する
By Ben Wolfgang – The Washington Times – Sunday, June 20, 2021
バイデン政権およびその国際的パートナーたちは、イランの政権と交渉することが如何に危険なことかに「覚醒し」、考え直すべきだ -イスラエルのナフタリ・ベネット新首相は日曜日の初閣議で、米国が主導してイラン・イスラム共和国と新たな核合意をとりまとめようとしていることを激しく批判した。
イランの司法長官で強硬派のエブラヒーム・ライシ氏が次期大統領に選出されて数時間後、ベネット首相は遠慮会釈のないコメントを出した。
バイデン大統領と彼の外交政策チームは、ライシ氏が今後六週間以内で大統領職に就く前、イランとの核合意を確実なものにしようと奔走していたと見られている。彼らが心配しているのは、イランの新指導部が米国との外交を断ち切り、両国関係がいっそう悪化することだ。しかしベネット首相によれば、イランの選挙結果は外交官たちの尻を叩く材料としてでなく警告と見るべきなのだ。「ライシ氏のような人物がイラン大統領に選ばれたことは、世界をリードする国々を覚醒させるシグナルだ。」同首相はさらに言う、「今まさにイラン合意に戻る寸前のタイミングで示された最後の警告ではないか。指導者たちは取引をしようとしている相手がどういう連中なのか、彼らが力を与えることになる政権がどのような性格なのかを理解するべきだ。」
バイデン大統領がアフガニスタンのガニ大統領と直談判しても、イランの影響力増大について無視させることだろう。「死刑執行人たちで造られている政府に、大量破壊兵器を持たせるわけにはいかない」、ベネット首相はそう言い切った。米国がイランに働きかけているのをベネット首相が引き放そうとしているのは、今月失脚するまで12年の長きにわたってイスラエルを率いたベンジャミン・ネタニヤフ前首相の立場と響き合うものがある。新首相はネタニヤフ氏を権力から追い出すために、過激な国家主義者や自由主義者、その他の幅広い政治勢力からなる連立政府を結成したばかりだ。
日曜日のベネット首相発言の真意は、「合意」を通じてイランが核計画を全面的に解体し、テロ支援を放棄するものでない限りイスラエル政府としては、米国および世界の強国とイランがまとめる如何なる合意にも断固反対することを表明したものだ。イランはイスラエルにとって不倶戴天の敵であるテロリスト組織のヒズボラとハマスを一番支援している国家だ。そのハマスは先月、イスラエル国内の非軍事標的にロケット攻撃をするという、前例なき作戦を実行し、11日間の戦闘で数百人の犠牲者を出したばかりだ。
イスラエルの強硬な反対にも関わらず、バイデン政権としては、オバマ政権下に米、イラン、露、中国、英、独、仏が署名した2015年包括的共同行動計画(JCPOA)に戻りたい。同協定では、イランが核開発計画を制限するという初めての約束と引き換えに、イランの凍結資産数十億ドルを解除した。
トランプ前大統領が2018年にJCPOAから撤退したとき、その理由として挙げたのは、同合意がイランのテロ支援について触れていないこと、2030年までにはイランの核計画に課した主な制限を解除するという「サンセット(日没)」条項が盛り込まれていたことだ。米国が核合意から撤退して数年、イランの態度は前より大胆になった。イラン・イスラム共和国はハマスとヒズボラに資金供与を続け、イエメンでは国際的に認められた政府に挑戦するフーシ派勢力を支援、ペルシャ湾では米海軍の船舶に日常的な嫌がらせを実行している。さらにイラクとシリアでは米軍人を標的にする地元民兵組織を応援し、アルカイダの幹部連中をかくまっているいるふしもある。
これら全てを飲み込んでもバイデン政権は前に向かっている。ホワイトハウスで国家安全保障担当のジェイク・サリバン補佐官は日曜日、米政府が迅速に行動してイランと新たな取引を取りまとめるプレッシャーを感じているか、と「フォックスニュース・サンデー」に尋ねられてこう語った。「我々の目論見はイランの核計画に改めて制限を課すことによって、一定の枠にはめることだ」。ひとたびJCPOAが全面復活したとき、「我々が考えているのは、もっと長期的かつ耐久性のある協定をまとめる次の段階の交渉に進むことだ」(同補佐官)。
ところでライシ氏は選挙戦での勝利後、イランと米国の交渉に関して口を閉ざしたままだ。「私の任期中、国民が与えた信託と投票と優しい気持ちに対して、しっかり応えていきたいと願っています」、ライス氏は土曜日にこう語った。ライシ氏は総投票数の約62%で支持されて選ばれたが、国政選挙ボイコットも呼びかけられる中で、イラン全国の投票率は記録的な低さだった。ちなみにライシ氏個人は、1988年、数千人のイラン人政治犯が死んだことに関与したとして、米政府による経済制裁の対象になっている。
そのことを示唆しながら、イスラエルのベネット首相は日曜日、ライシ氏を「テヘランの絞首刑吏」と呼び、そのような人物と取引するのは倫理的にも受け入れられないと表明した。「彼は長年にわたり数千人の無辜のイラン市民を死に追いやった委員会を率いており、イラン国民の間だけでなく世界でも悪名高い人物だ」、ベネット首相は指摘した。
米国が核取引を確保するために、ライシ氏に課せられた制裁措置を解除する意思があるかどうか明らかではない。サリバン補佐官も日曜日に、その質問には応じなかった。その代わり同補佐官は、「どの制裁が解除されるべきかという問題は、目下ウィーンでの交渉内容であり、私はそれらを公の場にさらすつもりはない」と、ABCニュースの「今週」番組に語った。一方でサリバン補佐官は、核に関する交渉でのライシ氏の役割を割り引こうとしてしているのか、イランの最高指導者・アヤトラ・アリ・ハメネイ師が「采配を振るっている」と強調した。
イラン当局者によれば、交渉で行き詰まっている部分もあるが、交渉が成立するか断念かの正念場が間もなく来るだろう。イラン側の核合意交渉トップを務めるセイド・アッバス・アラグチ外務副大臣は、「交渉の段取りと、合意できる内容が完全に明確なので、向こうが決断する時は迫っていると思う」と語った。 「あちらにはあちらの決定手法があるのだろうが、今ではどの分野の、何が可能で何が不可能が明らにされている。全当事者、なかんずく向こう側が最終決定を下す時は近い。」「数日間…話し合いを中断して、さらに協議と意思決定をするため、各国に帰国することになるだろう」、アラグチ副大臣は示唆した。ロシアの代表トップ、ミハイル・ウリヤノフ氏も、最終合意に達する前に、各国政府が「政治的決定」を下さなければならない、と語った。