生徒の成績に「公平性」導入、保護者・教師は悪影響懸念

(2025年6月21日)

2020年8月25日火曜日未明、デンバーの学校から新型コロナウイルスが流行している今、生徒たちが遠隔学習に参加しているデンバー公立学校が設置した55のディスカバリー・リンク・サイトのひとつであるニューロン小学校で、生徒たちがラップトップで作業している教室にはアメリカ国旗が掲げられている。(AP Photo/David Zalubowski)

By Sean Salai – The Washington Times – Tuesday, June 17, 2025

 カリフォルニア州サンリアンドロの公立学校では、平均点が80%程度でもA評価を取得でき、21%以上得点した生徒はD評価で合格できる。

 メリーランド州フレデリック郡では、不合格点の生徒は再受験でき、合格するまで論文を繰り返し再提出できる。

 これは「グレーディング・フォー・エクイティー(公平性に基づく評価)」と呼ばれ、教育関係者や保護者からは、黒人やヒスパニック系の子供に白人やアジア系の同級生と同じ成績を取らせるための誤った取り組みとして批判が高まっている。

 カリフォルニア州の自由市場派シンクタンク「パシフィック研究所」の教育アナリスト、ランス・イズミ氏は「公平性に基づく評価は、社会正義のレトリックに包まれた成績の水増しに過ぎない」と述べた。

 2020年から2022年の新型コロナウイルスの大流行による学校閉鎖期間中、オレゴン州からニューヨーク州までの数十のK-12(幼稚園から高校3年生)公立学区が、黒人やヒスパニックのテスト成績が急落したため、公平性に基づく評価システムを導入した。

 教育理論家が2010年代にこのアプローチを導入した。伝統的な評価方法は、低所得の民族的・言語的少数派に対して偏っていると考えられたためだ。

 ニューヨークの私立トゥロ大学教育学教授のスザンヌ・クーリー氏は「この指針の目的は、

隅に追いやられてきたグループ間の成績の格差を是正し、多様な生徒がより高度な授業を追求するよう促すことだ」と述べた。

 公平性に基づく評価では締め切りを決めず、宿題の成績への影響を排除し、授業参加や行動を評価基準から除外する。

 保護者や教師は、このような変更が生徒の将来に悪影響を与える悪い学習習慣を助長すると批判している。

 アトランタ公立学校は2023年秋、教師が、不完全であってもすべての取り組みに50%の成績を付与することを義務付ける「ゼロ点禁止」の指針を導入したが、反対の声が強く1週間で廃止された。

 5月、サンフランシスコ統一学区(SFUSD)は、14校の70人の教師を対象にした公平性パイロットプログラムの開始計画を、親からの多数の苦情を受けて一時停止した。

 マリア・スー教育長は、リベラル派のロ・カーナ下院議員らカリフォルニア州の民主党議員がソーシャルメディアで計画を批判した直後、パイロットプログラムの秋からの実施を一時停止した。

 サンフランシスコのダニエル・ルーリー市長(民主党)は5月28日、X(旧ツイッター)に「私たちは若者に成功するための教育を提供すべきだ。SFUSDの成績評価変更案では、その目的は達成できない。SFUSDに私たちの考えを伝えた。私たちの子供たちとその未来にとってより良い道があると希望的に考えている」と投稿した。

 トランプ政権は学校での「多様性、公平性、包括性」プログラムの禁止に取り組んでいる。

 公平性評価システムが、人種に基づいて生徒を差別的に扱うことを禁じる大統領令に違反するかどうかは、依然として不明だ。

 教育省の広報担当エレン・キース氏は「参加賞と同じように、『公平性』評価システムは習熟度や学習の成果を後回しにする。トランプ政権は、リベラルな学校委員会と異なり、次代の国民がしっかりした仕事に就けるよう備えることに焦点を当てている」と述べた。

 現在、公平性評価への反発の大部分は、このシステムを採用する学校で生徒が宿題をしなくなっていると訴える保護者や教師から寄せられている。

 この問題を追跡している保守派教育シンクタンク「トーマス・B・フォードハム研究所」の全国研究ディレクター、アダム・タイナー氏は「全米で抗議の声が上がっており、その声は保守派や政治的に中道的な地域以外でも見られる」と述べた。

 オレゴン州のコーバリス学区は、2020年の学校封鎖期間中に「公平な評価」を義務付けたが、2年後、教職員の反発を受けて任意に変更した。

 学区の広報担当ケリー・ロシー氏は、コーバリスは依然として「一貫した」評価方針を明確にできないでいると述べた。

 ロシー氏は、「2020年から2022年までの期間に最も強く反発したのは教師だった。最近では、コーバリス学区で公平性に基づく評価基準が義務付けられなくなり、各部門が独自の評価基準を設定するようになったため、保護者から評価基準がばらばらとの抗議を受けている。生徒が6つ、7つの異なる評価方法があることを把握しなければならず、混乱や不安を招く可能性がある」と述べた。

偏ったシステム

 こうした抗議にもかかわらず、公平性評価を実施する公立学区は増えている。

 過去3年間にこの方法を試した他の学区には、ボストン、ミシガン州オースティンヒルズ、コネティカット州スタンフォード、バージニア州フェアファックス、ネバダ州クラーク郡、ニューヨーク州シェネクタディ、ワシントン、オレゴン州ポートランドなどがある。

 さらに、ニューヨーク市とロサンゼルスの数千人の教師がこのシステムのトレーニングを受けている。

 支持者らは、これらの例を、少数派の成績格差が著しい地区で公平性評価が成功している証拠と指摘している。

 アメリカン大学の人種差別撤廃研究・政策センターに所属する異文化コミュニケーション学の教授、オメコンゴ・ディビンガ氏は、「米国の評価システムは偏っており、高速インターネットや勉強に適した安全な家庭環境、さらには家庭教師など、特定の方法を利用可能な人々が優遇されている。公平性評価システムは、生徒の生活を包括的に捉え、テストや宿題というその時だけの成果に依存しないアプローチを採用している」と述べた。

 ワシントン・タイムズが調査した一部の学区は、公平性評価システムが少数派の学生の機会均等を促進したと主張している。

 ヒスパニック系の生徒が50%を占めるカリフォルニア州北部のサンリアンドロ統一学区の広報担当ケジア・モス氏は、「このアプローチをとれば、生徒が何を学んだのかを明確に示すことによって、生徒が次にどのような科目を履修可能か、さらには大学進学、就職、その他の高等教育に向けてどれだけ準備が整っているかが分かるようなる」と述べた。この学区では、2016年に公平性評価システムを導入した。

 メリーランド州フレデリック郡公立学校は2024―2025年度に公平性評価を導入し、宿題を生徒の授業の成績の10%に限定し、授業出席を評価対象から除外した。

 フレデリック郡の指針は、中学校と高校の生徒に対し「最初のテストで最善を尽くすよう強く推奨」するが、C評価を得るまで再受験を許可している。また「授業時間を活用して課題を期限内に完了するよう強く推奨」している。

 学区の広報担当者ブランドン・オランド氏は、フレデリック郡当局者が「システムの継続的な改善に役立てるため」に教師、管理者、保護者からフィードバックを収集していると説明した。

 「広範な反対意見は出ていない」とオランド氏は述べた。

今後の展望

 一部のアナリストは、公平性評価では人種間の不平等という根本的な問題を解決することはできないため、この傾向は持続しない可能性が高いと指摘している。

 シカゴ大学公共政策教授で不平等研究者のスティーブン・デュラルフ氏は「このような指針は、イデオロギーに基づく逸脱であり、本質的な問題から離れている。これらを解決するには、すべての子供に対する質の高い早期教育への投資、公立学校へのより多くの投資、学校と地域の統合が必要だ」と主張する。

 教育透明性推進団体「THINC財団」の創設者ミッチ・ジーグラー氏は、今は「(親たちが)公平性のような流行語に以前ほど共感しなく」なっており、公平性評価は期待通りの成果をほとんど挙げられない、そこが問題だと指摘した。

 サンディエゴ在住のジーグラー氏は、「公平性評価は、多くの場合、生徒がどのような成果を挙げたかとは関係なく、できるだけ多くの生徒に高い評価を与えることに焦点を当てているように見える。カリフォルニア、メリーランド、ミシガン、オレゴンなどの州のリベラルな地区で浸透しつつあるが、全国的な規模では広がっていない」と述べた。

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