米のイラン攻撃は中国への警告、台湾攻撃への抑止力にも

2015年9月3日、北京の天安門前で行われた第二次世界大戦中の日本の降伏70周年を記念するパレードに参加する99A2型中国戦車とスクリーンに映し出される習近平国家主席。(AP Photo/Ng Han Guan, File)
By Bill Gertz – The Washington Times – Tuesday, June 24, 2025
米国がイランの核施設に対して行った前例のない長距離爆撃は、グアムへの偽装用のB2ステルス爆撃機派遣を含め、中国の台湾攻撃に対する抑止力を強化する副次的な効果をもたらしたとの分析が、中国問題専門家から出ている。
20日に開始されたこの作戦には、イランに「戦術的奇襲」を仕掛けるために、太平洋方面におとりとなる軍用機を飛ばす措置が含まれていた。この任務は別の戦略的効果も生み出した。中国が台湾を攻撃した場合、同様の爆撃を受けるという警告となったからだ。
米国務省の元中国政策顧問マイルズ・ユー氏は、おとりの爆撃機がイランを欺き、「見事な抑止作戦」として機能したと述べた。
「この作戦は、米軍がテヘランや台湾海峡など、地球の反対側にある遠方の紛争で、あらゆる敵を凌駕する、卓越した戦略立案能力、調整能力、戦闘能力を備えていることを示した点で、中国共産党に厳しい警告を発する形となった」
二つの核施設が、大型地下貫通型爆弾GBU57「バンカーバスター」14発によって損傷を受けた。同じ頃、巡航ミサイル潜水艦(SSGN)から24発の巡航ミサイル「トマホーク」が、三つ目の核施設に向けて発射された。
中国は、北京西部の地下に中央軍事委員会指揮センターなど、攻撃に耐えられる広範な地下施設を保有していることが知られている。イラン攻撃にGBU57を使用したことで、中国の地下施設も米国の攻撃を受ければ、安全ではないことを示した。
退役海軍大佐で、太平洋艦隊の元情報部長ジム・ファネル氏もおとり作戦を高く評価、「公開情報を収集、分析する機関を欺き、作戦上の安全を確保しただけでなく、(中国が)西太平洋に『支配権』を持っていないこと、米国が依然として世界一の軍事大国であることを示す非常に重要なシグナルとなった」と強調した。
ファネル氏は、この攻撃が中国に対して明確な抑止効果をもたらすとの見方を示した。
潜水艦から水中発射されたトマホーク巡航ミサイルを使用したことも、中国に対する重要な戦略的メッセージとなった。
防衛アナリストらは、作戦でトマホークを発射したSSGNは中国が最も恐れる米軍の兵器の一つであり、射程1600キロを超えるトマホークを最大154発搭載可能だ。
マイク・ポンペオ前国務長官は、イランの核施設に対する空爆とイスラエルの攻撃によって、中国と協力して中東で米国の勢力と影響力を消耗させるための「イランの役割は著しく低下した」と述べた。
ポンペオ氏は、中国が国連でイラン攻撃を非難しても、中東の同盟国を支援できなかった事実を隠すことはできず、これは「中国の力の限界を明確に示している」と指摘した。
一方、オーストラリア海軍の元将校ジェニファー・パーカー氏はオーストラリアン紙で、イランへの空爆は中国に対し、米国の強い意志を示す重要な戦略的メッセージであり、中国を牽制(けんせい)する効果があると指摘、「米国のイラン攻撃は、インド太平洋地域での抑止力の再確立へ一定の効果をもたらす」と述べた。
また同氏は、北大西洋条約機構(NATO)、ウクライナ、関税を巡る懸念はあるが、米国は孤立主義に後退してはいないと指摘し、オーストラリアが地域の抑止力として貢献したいなら、燃料の備蓄を強化し、国防費と軍事力を急速に拡大する必要があると強調した。
パーカー氏は、中国は、他の地域での侵略行為に対して国際社会がどのように反応するかを見ながら、台湾の併合や他の地域での領有主張の拡大の可能性を探っていると主張した。
中国は近年、南シナ海でフィリピンの排他的経済水域(EEZ)内で活動するフィリピン船舶に衝突させたり、放水したりするなど、威圧的、攻撃的な行動を強めている。