子育てに新たなトレンド「意図的な放任」 懐疑的な専門家も

(2026年4月10日)

集中して木製の電車セットで遊ぶ子供を、大人が見守っている。写真提供:ivi.photo93(Shutterstock経由)。

By Sean Salai – The Washington Times – Wednesday, April 8, 2026

 子育ての新たなトレンド「ビナインネグレクト(意図的な放任、好意的無視)」、その是非を巡り、専門家の間でも評価が割れている。

 ビナインネグレクトは、「フリーレンジ(放し飼い)子育て」とも呼ばれ、厳格な管理下で子供を監視する「ヘリコプター」型のアプローチや、子供の感情に常に寄り添い続ける「ジェントル(穏やかな)」アプローチに代わる選択肢を提示している。これは、子供に一人になる空間を与え、自力で問題を解決することを促すものだ。

 コロナ禍の緊急事態以降、多くの子育てに関する記事やSNSのインフルエンサーがこの考えを広めてきた。

 フロリダ・ニューラル・ディスカバリー研究所の創設者で、家族心理学者のビンス・キャラハン氏は「子育ての常識が、手をかけすぎる管理型から離れつつあることを示す事例が増えている。これは全く新しい流行というよりは、行き過ぎた文化への反動のようなものだ」と述べた。

 ワシントン・タイムズが取材した医師やセラピストは、この傾向を1980年代の「鍵っ子」時代の理想の復活だと捉えている。当時の子供たちは、困ったときには大人が助けてくれるという安心感の中で、一人でトラブルに向き合うことで精神的なタフさを身につけていた。

 テキサス州ダラスの小児科医イシャ・マナリング氏は「これは本当の意味での『育児放棄』を指しているわけではない。今の『良い親は常に介入するもの』という強迫観念への反動だ」と解説する。

 同氏はこれを、危険な状況を無視するのではなく、親が「あえて手を出さない」ことを選ぶ「意図的な不干渉」として評価している。

 「ビナインネグレクトへの注目が集まっているのは、臨床的に見れば納得がいく」と話すのは、トラウマ専門の心理学者ケリー・ゴンダーマン氏だ。

 「常に監視され、すぐに助け舟が出され、人生の摩擦をすべて取り除かれて育った今の若者たちは、ちょっとした挫折に弱く、自分で解決策を考えたり、不快な状況に耐えたりする力がかなり弱くなっている」

 一方で、たとえ「ビナイン(良質)」であっても「ネグレクト(放任、放置)」という言葉を使うことで、親の育児への無関心を正当化させ、子供を傷つけることになりかねないと警告する声もある。

 コロラド州のセラピスト、シェリ・ラングストン氏は、「育児に疲れている親は多いし、単に楽をしたい親もいる。自分たちにとってちょうどいいバランスを必死に探している親もいるはずだ」と言う。

 ビナインネグレクトを支持する人々は、ジーン・トウェンジ氏やジョナサン・ハイト氏といった心理学者の研究を引き合いに出している。親が過保護になりすぎたせいで、子供たちが現実の人間関係を築く代わりに、デジタル依存へと追い込まれてしまったというのがその主張だ。

 2024年の学術誌に掲載されたレビューによると、「過保護で支配的な子育て」は、子供の不安やうつ病のリスクを高めるという。

 38件の研究を精査したこのレビューによれば、過保護な親に育てられた子供は、「自分には困難を乗り越える力はないし、世の中の危険からいつも誰かに守ってもらわないとだめなんだ」という無言のメッセージを受け取ってしまう可能性があるという。

 一方で、2023年のサイコロジートゥデーの記事では女優ジェニファー・ガーナー氏が実践しているビナインネグレクトが、健全な自立を助ける「ほどほどに良い」育て方として紹介された。

 ガーナー氏は2023年11月のNBC「トゥデー」でのインタビューで、「子供のそばにはいたいけれど、少しぐらい『ビナインネグレクト』で苦労するのも悪くないと思う」と語り、大きな反響を呼んだ。

 「彼らの人生は彼らのもの。私は彼らの代わりに生きることはできないし、自分の人生を楽しんでいる姿を見せるのは、いいことだと思っている」

 2024年のピアレンツ・コムの記事でも、意図的な「放任」と「怠慢」は別物だと強調している。

 キリスト教系ガールスカウト団体アメリカン・ヘリテージ・ガールズの理事レイチェル・カルペッパー氏は、「意図的なスペース」という言い方を好んで用いる。

 ビナインネグレクトを支持するカルペッパー氏は、「子供に信頼された大人が適切なタイミングで、干渉をあえて避ければ、女の子たちは実体験を通じて判断力や自信、粘り強さを手に入れられる」と語った。

 「少女たちが背伸びをして、つまずいて、また立ち上がる。その時に初めて本当の強さが根付く。障害物をすべて取り除いてあげるのではなく、彼女たちが自分で乗り越えていくのを、隣で一緒に歩きながら見守ることが成長につながる」

これからの流れ

 このビナインネグレクトが一時的なブームに終わるのか、子育ての大きな転換点になるのかはまだ分からない。

 サンタクララ大学の心理学教授で、米心理学会会員のトーマス・プランテ教授は、「このトレンドを実際に見かけることはまだあまりない。全体的には、やはり子供に多くを期待し、できる限り保護しようとする親が主流だ」と語った。

 サンフランシスコの行動心理学者アビゲイル・レブ氏は、高齢の親は子供の痛みに過剰に干渉して失敗しがちで、一人で対処させる方が成長にとってはいいこともあると指摘する。

 「私が相談を受ける多くの親は、やはり『ジェントル型』に近い。子供が辛そうにしているのを、すぐに止めようとせずに見守るのは、親にとってもすごく忍耐がいることだ」

 中には、この考え方が親の無責任な行動の言い訳に使われることを懸念する声もある。

 例えば、ペンシルベニア州ではアミューズメントパーク「ハーシーパーク」で親が幼児をよく見ていなかったために、オオカミの囲いに入って噛まれるという事故があり、両親は子供を危険にさらしたとして軽罪で起訴された。

 米フロリダ州では先週、警察が、家族の友人から預かっていた7歳の子供を見失った女性を、児童ネグレクトの疑いで逮捕した。警察は、水着姿の子供が雨の中、おなかをすかせて一人でサンカルロスパークの通りをさまよっているのを発見した。

 ルイジアナ州ラファイエットの小児精神衛生療法士ナタリー・バナー氏は、多くの親がビナインネグレクトを「自分で何とかしなさい」と子供に任せることだと理解しているのではないかと指摘する。

 バナー氏は「この傾向は、明確な目的もなく続けば、子供全体の健康に悪影響を及ぼす。効果的な考え方とは言えない」と批判した。

 さらに、ニクソン政権の顧問だったダニエル・パトリック・モイニハン氏が1970年代に「ビナインネグレクト」という言葉を生み出したことにも触れ、子育ての文脈でこの言葉が再び使われているのは奇妙だと指摘した。

 モイニハン氏は当時、人種統合政策に対して「何もしない」方針を提唱するメモの中でこの言葉を使用し、連邦政府が圧力を弱めれば人種間の緊張は和らぐと主張していた。

 バナー氏は「ビナインネグレクト型の子育ては主に、ヘリコプター型の子育てと同様、親の側に利益をもたらす。子育てへの不安を和らげるためであれ、責任から距離を置くためであれ、いずれのスタイルも、子供を通じて親自身の欲求を間接的に満たそうとする点で共通している」と指摘した。

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